「もう遠い昔の,ある冬の日のことだ。すでにあたり一面には雪が降り積もり,遠くに,赤いコートを着た女の子が,ひとり,立ち尽くしていた。僕は彼女のことなど知らない。ただ,そこにいただけだ。どこまでも続く雪原と,北風に流れる鉛色の空,そして,少女の姿。その風景が今も目に焼き付いて,離れない」。
あるオンライン日記制作者は,事故で6週間前に失われたサイトの情報を,検索サイト「グーグル」のキャッシュ機能で,400ページすべて修復できた。グーグルでは約13億ページをキャッシュに保存,その容量は4〜5テラバイトにのぼる。
グーグルのキャッシュは役に立つことが多い。場合によっては,そのサイトに行くよりもキャッシュを見たほうがレスポンスも早く,必要な箇所を見つけやすいこともある。もとより,失われたサイトを探しだすのは,至難の業だ。ここからリンクをたどっていったんだよなと記憶をたどりながら,もう一度たどってみても,どこかで違う道筋に入り込み,そんなサイト,なかったかのように迷路の入り口で立ち尽くすことも多い。ブラウザの履歴をチェックしてもちょうど保存件数を超えていて消えてしまっている。キャッシュにも残っていない。あるのは,曖昧過ぎる,でも,鮮明な,記憶の中だけだ。
そういえば,先日のvirtualaveの粛正はなかなか規模が大きかった;-P。もともと検索エンジンにひっかからないサイトばかりなので,他のリンク元などを参考にして,移転先などを探すことになる。のだが,そうは簡単にいかない。あの日の記憶の風景のように,まぶたの裏にはあって,でももう手は届かないサイトたち。十数年もたったある日,そんな風景が,ふいに思い出される日も,来るのだろうか。あの日の,少女のように。
|